1.「有害大気汚染物質モニタリング調査」について
「継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある物質で大気汚染の原因ともなるもの」(大気汚染防止法第2条第15項)として「有害大気汚染物質」248物質が選定され、その中でも、有害性の程度や大気環境の状況等を考慮し、健康リスクがある程度高いと考えられる「優先取組物質」23物質について、地方自治体による汚染状況の把握が義務付けられています。このため、福岡県においても、大気汚染防止法第 22 条に基づき実施してきた光化学オキシダント(Ox)、微小粒子状物質(PM2.5)等の常時監視項目に加えて、平成10年より有害大気汚染物質のモニタリング調査を実施しています。
2.「六価クロム分析システムの導入」について
クロムは環境中では、主に「三価クロム」又は「六価クロム」として存在しています。「三価クロム」はヒトの体にとって微量必須元素と考えられていますが、「六価クロム」は発がん性があるなど極めて有害な元素として知られています。その「六価クロム」は、天然にはほとんど存在せず、様々な化合物として工業的に製造され、顔料・防腐剤・表面処理剤などの用途に使われる過程で一部が環境中に排出されます。
そのため、平成23年度に「優先取組物質」に「六価クロム」が追加されましたが、当時は「三価クロム」と「六価クロム」を分離して測定する方法が確立されておらず、これまで「全クロム」として測定が行われてきました。
その後、分析法の検討が重ねられ、平成29年3月に「大気粉じん中の六価クロム化合物測定方法」が開発・公表されたことから、今年度、福岡県は、全国に先駆けて「大気粉じん中の六価クロム分析システム」を導入し、有害大気汚染物質モニタリング調査の測定対象成分に「六価クロム」を追加しました。これにより、福岡県では全ての優先取組物質(ダイオキシン類を含む)の大気中濃度の監視が図られる体制となりました。
3.「六価クロムの採取〜分析」について
「六価クロム」は以下のような操作を経て測定されます。
@ 吸着するろ紙を酸で洗浄後アルカリ含浸させ乾燥させる。
A ろ紙を専用のろ紙ホルダーにセットしミニポンプ(5L/min)で約24時間採気する。(写真@)
B ろ紙を超純水に浸し、超音波抽出を行う。
C 抽出液をろ過し、「六価クロム分析システム」で測定する。(写真A)
(本システムでは、高濃度の硫酸溶液(腐食性)を使用するため、耐食性材料を使用した送液ポンプ・検出器セル等を用いています。)
また、「六価クロム」の検出原理は以下のとおりとなります。
@ 六価のクロムイオンをイオン交換カラムで分離する。
A 試薬(ジェフェニルカルボノヒドラジド)と反応させる。
B 吸光度検出器で540nmの波長を測定する。
写真@:採取機材 写真A:六価クロム分析システム
参考文献
環境省:大気粉じん中の六価クロム化合物測定方法
https://www.env.go.jp/air/osen/manual2/pdf/6kakuromu.pdf